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転倒予防2026年10年14日 更新

段差でつまずく原因と対策|何ミリから危ないか、職場の点検と直し方

この記事の結論

職場の転倒で最も多い原因は「つまずき」です。厚生労働省の分析では転倒の37.8%がつまずきで、滑り(31.8%)を上回ります。危ないのは大きな段差ではなく、数ミリ〜数センチの「目に入らない段差」です。住宅の高齢者向けの基準では、5mmを超える高低差は「段差」として扱われます。一方で、つまずきの27%は何もないところや足がもつれて起きています。床と通路を直すことと、本人の足腰の状態に気づくことを一緒に進めてください。

1転倒の原因で最も多いのは「つまずき」転倒の37.8%。滑り(31.8%)より多い
2危ないのは「見えない段差」住宅の基準では5mmを超えると段差扱い
3つまずきの27%は「何もないところ」環境だけでなく、本人の足腰も見る

転倒の原因で一番多いのは「つまずき」

転倒というと「濡れた床で滑る」場面を思い浮かべがちですが、職場の転倒災害を原因別に見ると、いちばん多いのはつまずきです。

転倒の原因割合
つまずき37.8%
滑り31.8%
歩行中のバランス崩れ・足のもつれ4.7%
障害物を越えそこなう2.8%
動作の反動2.5%
その他・不明残り

しかも転倒の74%は、作業中ではなく移動中に起きています。休業日数は平均47日、ケガの約7割が骨折です。「転んだだけ」では済まないことが、この数字からわかります。

出典:厚生労働省 岩手労働局「転倒災害防止」資料(令和3年の休業4日以上の転倒災害を分析したもの)。業種や年によって割合は変わります。

つまずきの原因の内訳

つまずきの中身をさらに分けると、対策の優先順位が見えてきます。

何もないところ・足がもつれる 27% 荷物など置かれた物 16% 床の凹凸 10% 車止め 8% 機器・家具の角 8% コード類 7%
一般の業種で起きた「つまずき」による転倒を、原因別に分けたもの(主なもの)。出典:厚生労働省 岩手労働局「転倒災害防止」資料(令和3年データ)

ここから読み取れることは2つです。

段差は何ミリから危ないのか

「段差 何センチから危ない」とよく検索されますが、答えはセンチではなくミリの単位です。

目安になるのが、住宅の高齢者向けの基準です。国土交通省の告示(平成17年国土交通省告示第1150号)では、日常生活で使う空間の床は「段差のない構造」とし、その「段差のない」には5mm以下の段差を含むとしています。言い換えると、5mmを超える高低差は「段差」として扱うということです。

高さ職場で起きやすい場所危なさ
5mm以下床材のつなぎ目、薄いマットの端住宅の基準では「段差なし」。ただし足の上がりにくい人は引っかかることがある
5mm〜2cmマットのめくれ、敷居、床のたわみ、配線モールいちばん危ない帯。目に入らず、足も上げないので引っかかる
2cm〜5cm出入口の段、スロープの端、車止め見えれば越えられるが、暗い場所・荷物を持っているときに危ない
はっきりした段階段、荷捌き場の段差誰でも注意するので、つまずきより「踏み外し」が問題になる

数値の出典:高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則に基づく国土交通大臣の定める基準(平成17年国土交通省告示第1150号)。住宅向けの基準であり、事業場に適用される法令の基準ではありません。職場で点検するときの目安としてご覧ください。

5mm
住宅の高齢者向けの基準では、5mmを超えると「段差」です。危ないのは目に入らない数ミリ〜数センチの段差。大きな段差より、気づかない小さな段差のほうが人を転ばせます。 平成17年国土交通省告示第1150号(住宅向けの基準)

小さな段差ほど危ない理由

職場で点検する場所と直し方

点検は、実際に歩きながら行うのがいちばん確実です。歩くルート(入口→更衣室→作業場→休憩室→トイレ→出口)に沿って、次の表を順に見てください。

場所見るところ直し方
出入口・敷居扉の下のレール、敷居の出っ張りすりつけ板(ミニスロープ)、段差部分に色テープ
マット端のめくれ、波打ち、ずれ端を固定、薄く滑りにくいものに替える、めくれたら交換
床の継ぎ目・たわみ床材の浮き、タイルの欠け、床のへこみ補修。すぐ直せないときは囲って目立たせる
配線通路を横切る電源コード・LANケーブル配線経路を壁沿いに変える。横切るなら床用モールで覆い、色で目立たせる
置かれた物通路の段ボール、台車、脚立置き場を決めて床に線を引く。通路に「何も置かない」を決まりにする
家具・機器の角机の脚、キャスター、ラックの足動線から外す。角にクッション材や色を付ける
屋外・駐車場車止め、縁石、排水溝のふた車止めを目立つ色に。歩くルートと車のルートを分ける
照明暗い通路、倉庫、階段照度を上げる。人感センサー照明
靴すり減った靴底、つま先が反っていない靴、かかとを踏んだ履き方、サンダル作業靴の基準を決める。靴底の交換の目安を示す。かかとを踏まない

照明は「法令の最低ライン」を確認する

小さな段差は、暗いとさらに見えなくなります。事務所の照度は、事務所衛生基準規則で一般的な事務作業は300ルクス以上、付随的な事務作業は150ルクス以上とされています(令和4年12月1日施行)。これは作業面の基準ですが、通路や倉庫の暗さを見直すきっかけになります。

出典:厚生労働省 愛媛労働局「事務所衛生基準規則等の改正について」。

「段差をなくせない」ときは見えるようにする

すべての段差は直せません。直せないときは段差を見える化します。

何もないところでつまずく人がいる

つまずきの27%は、床に何もないところや、足がもつれて起きています。この部分は、環境をどれだけ直しても減りません。

何もないところでつまずくのは、歩くときに足が上がりきっていない、片足で体を支える力が落ちている、といった体の側の変化が関わっていることがあります。そして本人はたいてい気づいていません。「最近よくつまずく」と感じても、年のせい・疲れのせいで片づけてしまいます。

見方何がわかるか詳しく
厚生労働省のセルフチェック票2ステップ、座位ステッピング、片足立ちなど5種目で体力を点数化セルフチェック票の使い方
立位バランス測定立っているときのふらつきを測り、立位年齢®として実年齢と比べる立位バランス測定でわかること
骨健康度測定転んだときの「折れやすさ」の目安骨健康度測定でわかること

2026年4月からは、高年齢の労働者の体力の状況を把握することが、国の指針で事業者に求められるようになりました(努力義務)。段差の点検と体力チェックを同じ時期に行えば、「環境」と「人」の両面を一度に見直せます。指針の内容は高年齢者の労働災害防止のための指針とはにまとめています。

ここで紹介する測定機器は、つまずきや転倒を予測・診断するものではありません。結果は運動や環境を見直すきっかけとして使ってください。

点検から改善までの進め方

順番やることポイント
1歩くルートを決めて、実際に歩いて点検する朝・夕方など暗い時間帯にも一度歩く
2段差・置かれた物・配線を写真で記録する場所と高さ(ミリ単位)をメモ
3ヒヤリ・ハットが出た場所と重ねる同じ場所に集中していれば最優先
4すぐ直せるもの(物の片付け、配線、テープ)から直す費用がかからないものは今週中に
5工事が必要なもの(床、出入口)は予算化する次年度の安全衛生計画に入れる
6体力チェック・測定会で「人」の側も見る何もないところでつまずく人に気づける
7半年後にもう一度歩いて点検するマットのめくれ・物の置き直しは元に戻りやすい

職場全体の転倒対策の考え方は、職場の転倒予防|労働災害で最も多い型と、実行できる対策で詳しく解説しています。

よくある質問

Q1. 職場の転倒で一番多い原因は何ですか?

A. つまずきです。厚生労働省 岩手労働局の資料(令和3年の休業4日以上の転倒災害を分析)では、転倒の37.8%がつまずき、31.8%が滑りでした。つまずきの内訳は、何もないところ・足がもつれる27%、置かれた物16%、床の凹凸10%、車止め8%、機器・家具の角8%、コード7%です。

Q2. 段差は何ミリから危ないのですか?

A. 住宅の高齢者向けの基準(平成17年国土交通省告示第1150号)では、5mm以下の高低差は「段差のない構造」に含まれ、5mmを超えると段差として扱われます。職場では、5mm〜2cm程度の目に入りにくい段差が最も引っかかりやすいため、点検の目安にしてください。

Q3. 小さな段差がかえって危ないのはなぜですか?

A. 小さな段差は目に入らず、平らだと思って足を上げずに歩くためです。床と同じ色や素材だと段差として認識されにくく、荷物を持って足元が見えないときや、毎日通る慣れた場所ではさらに気づきにくくなります。

Q4. 段差をなくせない場所はどうすればよいですか?

A. 段差を見えるようにします。段差の縁に床と違う色のテープを貼る、照明を段差に向ける、足元に「段差あり」と表示する、といった方法です。出入口の小さな段差には、すりつけ板(ミニスロープ)も使えます。

Q5. 何もないところでつまずくのは、なぜですか?

A. 歩くときに足が上がりきっていない、片足で体を支える力が落ちている、といった体の側の変化が関わっていることがあります。本人は気づいていないことが多いため、体力チェックや立位バランスの測定で状態を数値にして本人に返すと、気づくきっかけになります。不安がある場合は医療機関に相談してください。

Q6. 点検はどのくらいの頻度で行えばよいですか?

A. 少なくとも半年に1回、実際に歩くルートに沿って点検してください。マットのめくれや通路への物の置き直しは元に戻りやすいため、ヒヤリ・ハットが出た場所はその都度見直します。暗い時間帯にも一度歩くと、照明の不足に気づけます。

Q7. 体力チェックや測定会の相談はできますか?

A. できます。立位年齢を測る StA²BLE は1日55,000円、骨健康度測定器 骨ウエーブは1日45,000円からレンタルできます(2026年10月時点・税別)。人数と会場をお知らせいただければ、台数と当日の流れをご提案します。お問い合わせフォームからご連絡ください。

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