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健康経営の基礎2026年09年18日 更新

健康経営の効果をどう測るか|KPIと見える化の設計

この記事の結論

健康経営のKPIでいちばん多い失敗は、1年目からいきなり「生産性」や「離職率」を追うことです。これらは1年では動かず、動いたとしても健康施策の効果だと示せません。まず動かせるのは行動の指標、つまり参加率です。ここを積み上げてから、結果の指標に手を伸ばしてください。

11年目は行動の指標生産性や離職率は1年では動きません
2測定値をKPIにしない数値目標を課すと、測るのを避ける人が出ます
31人あたりで示す「5万円で120人、1人417円」は誰にでも通じます

指標は2種類に分けて考える

行動の指標結果の指標
例参加率、受診率、利用回数離職率、休業日数、生産性
動くまですぐ動く数年かかる
因果関係施策と直結する他の要因が多すぎて特定できない
1年目にこれを追う記録だけしておく
経営層への説明「取り組みが動いている」「会社の状態が変わった」

1年目は左側だけでかまいません。右側は記録を始めておくだけにして、数年の推移で見てください。「今年の施策で離職率が下がりました」という主張は、ほぼ確実に突っ込まれます。

まず置くべき5つの指標

指標どこから取るか見るポイント
健康診断の受診率総務・健診機関100%が目標。未受診者を減らす
再検査の受診率把握していない会社が多いここに最大の伸びしろがある
施策への参加率イベントや測定の記録部署ごとに見ると手が打てる
2回目に参加した割合同上「続く仕組み」かどうかの指標
常設機器の利用回数機器の記録、または記録用紙置き場所が正しいかの判断材料

2行目に注目してください。健診は受けているのに、要再検査と言われた人が病院に行っていない。多くの会社で起きており、しかも手をつけやすく、効果も説明しやすい課題です。

測定機器から取れる数字

健康チェック機器を導入している場合、次のような指標が取れます。ただし取り方を間違えると施策そのものが壊れます。

取ってよい取ってはいけない
何人が測ったか(参加率)誰がどの数値だったか
2回目に測った人の割合個人名つきの測定履歴
部署ごとの参加率部署ごとの測定値の平均を比べる
全体の分布(個人名なし)ランキング、部署対抗
常設機器の利用回数誰が何回使ったか

右の列に手を出した瞬間、社員は正直に測らなくなります。とくに体組成やストレスのような、人に知られたくない項目で顕著に出ます。会社が知りたいのは「施策が機能しているか」であって、「誰の数値がいくつか」ではないはずです。詳しくは測定データの活かし方をご覧ください。

測定値そのものをKPIにしない

「体脂肪率の平均を1年で2ポイント下げる」といったKPIは、一見すると健康経営らしく見えますが、実務では機能しません。

測定値は「本人に返すもの」であって、「会社が追う目標」ではありません。この線引きが健康経営のKPI設計でもっとも重要です。

見える化の順番

「見える化」という言葉は便利ですが、何を誰に見せるのかが曖昧なまま使われがちです。整理すると3つあります。

誰に何を見せるか目的
本人自分の測定結果と、前回との比較行動が変わること
経営層参加率、受診率、費用と実施内容継続の判断がつくこと
社外取り組みの内容と認定の有無採用、企業イメージ

混ぜないでください。本人向けの数値を経営層に出す、社外向けの数字を社内に出す、といった形にすると、どこかで必ず無理が出ます。

経営層に説明するときの組み立て

1年目の報告は、次の順で組むと通りやすくなります。

  1. 何をやったか/実施した施策、日程、対象
  2. 何人が参加したか/参加率。部署ごとの内訳があるとよい
  3. いくらかかったか/レンタル費、リース月額、消耗品
  4. 1人あたりいくらか/費用 ÷ 参加人数
  5. 来年どうするか/参加率の目標と、そのための手

4が効きます。「レンタル5万円で120人が参加したので、1人あたり417円でした」という言い方は、健康の話が苦手な相手にも通じます。

参加人数レンタル5万円の場合の1人あたり
50人1,000円
120人417円
200人250円
300人167円

この表は「参加率を上げる意味」の説明にもなります。同じ費用でも、参加者が増えるほど1人あたりは下がります。

数年かけて見る指標

結果の指標は、1年目から記録だけ始めておいてください。判断に使うのは3年目以降です。

指標注意点
休業日数・長期欠勤者数母数が小さいと1人の状況で大きく振れる
離職率景気や採用市場の影響が大きい
有給休暇の取得率制度変更の影響を受ける
健診の有所見率年齢構成の変化で動く
生産性の指標健康施策の効果として示すのは困難

いずれも「健康施策の効果」として断定しないでください。並べて示し、判断は経営層に委ねる形が誠実で、結果的に信用されます。

プレゼンティーイズムという指標

健康経営の文脈でよく出てくる考え方です。出勤しているものの、体調が万全でないために本来の力を発揮できていない状態を指します。詳しくはプレゼンティーイズムとアブセンティーイズムにまとめています。

アンケートで測る手法が知られていますが、回答者の主観に依存するため、単年の数値で判断するのは避けてください。推移として見るか、施策の設計に使う材料として扱うほうが現実的です。

よくある質問

Q1. 健康経営のKPIは何を置けばよいですか?

A. 1年目は行動の指標です。健康診断の受診率、再検査の受診率、施策への参加率、2回目に参加した割合、常設機器の利用回数の5つから始めてください。離職率や生産性といった結果の指標は、記録だけ始めて数年の推移で見ます。

Q2. なぜ1年目に生産性を追ってはいけないのですか?

A. 1年では動かず、動いたとしても健康施策の効果だと示せないためです。景気、事業の状況、人員構成など他の要因が多すぎます。「今年の施策で離職率が下がりました」という主張は、ほぼ確実に反論されます。

Q3. 体脂肪率の平均をKPIにしてもよいですか?

A. おすすめしません。1年で集団の平均を動かすのは難しく、参加者も健康に関心のある層に偏ります。測定条件でも数値は揺れます。さらに数値目標を課すと、測るのを避ける人が出ます。測定値は本人に返すものと考えてください。

Q4. 会社が個人の測定結果を持たずに評価できますか?

A. できます。見るべきは参加率、2回目に参加した割合、常設機器の利用回数です。いずれも個人名を必要としません。個人名つきの測定履歴を会社が持つと、社員が正直に測らなくなり、施策そのものが機能しなくなります。

Q5. 経営層にはどう説明すればよいですか?

A. 何をやったか、何人が参加したか、いくらかかったか、1人あたりいくらか、来年どうするかの順で組んでください。「レンタル5万円で120人が参加し、1人あたり417円でした」という言い方は、健康の話が苦手な相手にも通じます。

Q6. 「見える化」とは何を見せることですか?

A. 相手によって3つに分かれます。本人には自分の結果と前回との比較、経営層には参加率・受診率・費用、社外には取り組みの内容と認定の有無です。これらを混ぜると、どこかで必ず無理が出ます。

Q7. 指標の設計から相談できますか?

A. できます。すでに取っている数字、社員数、実施したい施策をお知らせいただければ、測定機器の選定とあわせて、どの数字を取れる形にするかをご提案します。お問い合わせフォームからご連絡ください。

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