転倒リスクはどう測るのか|自己申告・体力テスト・機器測定の違い
転倒リスクの測り方は、大きく3種類
職場や施設で転倒リスクを把握する方法は、次の3つに整理できます。
| 自己申告 (チェック票) | 体力テスト (片足立ち等) | 機器測定 | |
|---|---|---|---|
| 費用 | ほぼ無料 | ほぼ無料 | 機器の購入・レンタル費 |
| 準備 | 用紙だけ | 広さと安全確保 | 設置スペースと電源 |
| 1人あたり | 5分程度 | 5〜10分 | 約1分(StA²BLEの場合) |
| 結果の客観性 | 低い(主観) | 中(実施者の差が出る) | 高い |
| 本人の納得感 | 低い | 中 | 高い |
| 経時比較 | しづらい | 条件をそろえれば可 | しやすい |
| 転倒中の人への安全性 | 問題なし | 転倒の危険がある | 立つだけなので低リスク |
結論から言うと、この3つは競合するものではなく、段階が違います。順に見ていきます。
StA²BLEは転倒リスクの評価を目的とした検査装置であり、疾患の診断・治療を行う機器ではありません。測定結果は健康状態を保証するものではなく、測定時の体調や環境によって変動します。
1. 自己申告(セルフチェック票)
厚生労働省の「転倒等リスク評価セルフチェック票」に代表される方法です。エイジフレンドリーガイドラインでも、体力の状況を把握する手段のひとつとして挙げられています。
評価区分(1〜5)とレーダーチャートの読み方は転倒等リスク評価セルフチェック票の使い方にまとめています。
良いところ
- 費用がかからず、明日から始められる
- 全員に一斉に実施できる
- 最初のスクリーニングとして十分機能する
限界
最大の弱点は、自覚がない人を拾えないことです。転倒リスクが高い人ほど「自分はまだ大丈夫」と答える傾向があります。
また、職場で実施する場合、正直に書くと不利になるのではという心理が働きます。配置転換や評価への影響を気にして、実際より良く申告されることがあります。
結果として、集計しても「うちは大丈夫そうだ」という結論になりがちです。
2. 体力テスト(片足立ち・ファンクショナルリーチ等)
実際に身体を動かして測る方法です。片足立ち時間、ファンクショナルリーチ、TUG(Timed Up and Go)などがあります。
良いところ
- 客観的な数値が出る
- 特別な機器が要らない
- 本人が「できなかった」と実感できる
限界
3つあります。
実施者による差が出ます。片足立ちの計測は、開始の合図、支えの許容範囲、終了の判断が人によってぶれます。去年と今年で担当者が違えば、数値の比較は難しくなります。
測定そのものに転倒の危険があります。バランスが悪い人に片足で立ってもらうわけですから、当然です。職場や施設で実施する際は、補助者と安全な場所の確保が要ります。
「なぜそうなったか」が分かりません。片足立ちが5秒だった人がいたとして、それが筋力の問題なのか、感覚機能の問題なのかは分かりません。対策を選べないということです。
3. 機器測定
専用の機器でバランス能力を計測する方法です。重心動揺計を使うものが一般的です。
良いところ
- 実施者による差が出にくい
- 条件をそろえやすく、経時比較に向く
- 測定中に転倒する危険が低い(立っているだけ)
- 結果を印刷して本人に渡せる
限界
機器の費用がかかります。また、測定できる人数と時間の制約があります。全員を一度に測ることはできません。
StA²BLEは何を測っているのか
StA²BLE(ステイブル)は、指先に付ける専用デバイスと重心動揺計で測定します。転倒リスクを「立位年齢®」という年齢の指標で、約1分で表示します。
特徴的なのは、筋力だけを見ているのではない点です。人は指先で軽く何かに触れるだけで、立っているときの姿勢が安定します(ライトタッチ効果)。この現象を利用して、身体機能と感覚機能の両面から評価する仕組みになっています。
詳しくは立位年齢®とは何かで解説しています。
実務的な使い分け
3つを対立させるのではなく、段階として組み合わせるのが現実的です。
| 段階 | 方法 | 目的 |
|---|---|---|
| 第1段階 | セルフチェック票 | 全員に配って、まず意識づけをする |
| 第2段階 | 機器測定 | 自覚のない人を拾う。数値で現状を確定させる |
| 第3段階 | 体力テスト/運動指導 | 対策の内容を決め、実施する |
| 第4段階 | 機器測定(再) | 効果を確認し、次の計画に反映する |
第1段階だけで止まっている職場が多いのが実情です。止まる理由は「次に何をすればいいか分からない」からで、第2段階の数値があると対策を決めやすくなります。
測定の前に決めておくこと
- 誰を測るか/全員か、年齢で区切るか、職種で区切るか
- いつ測るか/安全週間、健康診断の前後など、既存の行事に紐づける
- 結果を誰が見るか/本人だけか、安全衛生委員会にも共有するか
- 結果をどう使うか/個人の配置判断に使わないことを明示しておく
- 次にいつ測るか/再測定の予定を最初に決める
4番目が重要です。測定結果が人事評価や配置に使われるという疑いが少しでもあると、正直な参加が得られません。「安全対策のための測定であり、個人の評価には使わない」と最初に伝えてください。
5番目も同じくらい大事です。再測定の予定がない測定は、その場のイベントで終わります。測って終わらせない進め方もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q1. 転倒リスクはどうやって測るのですか?
A. 大きく3つあります。セルフチェック票による自己申告、片足立ちなどの体力テスト、重心動揺計などを使う機器測定です。費用・客観性・安全性がそれぞれ異なるため、段階に応じて使い分けます。
Q2. セルフチェック票だけでは不十分ですか?
A. 最初のスクリーニングとしては有効ですが、自覚のない人を拾えないという弱点があります。転倒リスクが高い人ほど「自分は大丈夫」と答える傾向があり、職場では評価への影響を気にして実際より良く申告されることもあります。
Q3. 片足立ちテストの問題点は何ですか?
A. 実施者によって計測がぶれること、測定そのものに転倒の危険があること、そして結果が出ても原因が筋力なのか感覚機能なのか分からず対策を選べないことです。
Q4. StA²BLEは何を測っているのですか?
A. 指先に付ける専用デバイスと重心動揺計を使い、立っているときのバランス能力を測定します。筋力だけでなく感覚機能も含めて評価し、結果を「立位年齢®」という指標で約1分で表示します。
Q5. 測定結果を人事評価に使ってもよいですか?
A. おすすめしません。評価や配置に使われるという疑いがあると、正直な参加が得られず、測定の意味が失われます。安全対策のための測定であり個人の評価には使わないことを、実施前に明示してください。
Q6. 実機で測定を体験できますか?
A. はい。実機デモのご相談を承っています。また、購入せずにレンタルや計測会という形で実施することもできますので、まず1回測ってみることから始められます。