肌分析機を使うときの表現の注意|薬機法・景表法で気をつけること
まず押さえること:肌分析機は医療機器ではない
肌分析機(肌診断機)は医療機器ではありません。疾患の診断・治療・予防を目的とした機器ではなく、分析結果は医学的な診断ではありません。
この一点から、使える表現と使えない表現がほぼ決まります。カウンセリングの会話でも、店頭のPOPでも、ウェブサイトでも、考え方は同じです。
この記事は、店舗運営で判断に迷いやすい点を整理したものです。個別の表現が法令に適合するかどうかの最終的な判断は、所轄の行政庁や薬事の専門家、または取り扱う商品のメーカーにご確認ください。
関係する2つの法律
| 薬機法 | 景品表示法 | |
|---|---|---|
| 主に見ているもの | 医薬品・医療機器・化粧品としての効能効果の表示 | 実際より著しく優良・有利に見せる表示 |
| 店頭で問題になる場面 | 「治る」「診断できる」といった説明 | 「必ず」「No.1」「全員に効果」といった訴求 |
| 対象 | 広告・接客での説明の両方 | 広告・POP・SNS・口コミ依頼まで |
どちらも、ウェブサイトだけの話ではありません。店頭での口頭説明も対象になります。スタッフ全員で共有しておく必要があるのは、このためです。
機器の説明でよく迷う言い方
| 避けたい | 言い換え |
|---|---|
| 肌を診断します | 肌の状態を測定して、数値で表示します |
| 肌トラブルを見つけられます | 肌の状態を7項目で確認できます |
| 医学的に正確な結果が出ます | 撮影条件による変動があるため、比較の参考としてご覧ください |
| 病院と同じ検査ができます | カウンセリングの参考情報としてご利用いただけます |
| 肌年齢がわかります | 項目ごとの状態を数値で表示します(※) |
※「肌年齢」は機器が算出する指標として表示される場合がありますが、医学的な年齢判定ではありません。表示する場合は、あくまで機器上の指標であることを添えてください。
なお、「肌診断機」という呼称そのものは、機器のカテゴリ名として一般に流通しています。カテゴリ名として使うことと、接客で「診断します」と説明することは別の問題です。後者は避けてください。
結果を説明するときの言い方
避けたい言い方
- 「このシミは消えます」「しわが治ります」
- 「このままだと○○になります」(疾患を示唆する)
- 「肌が生まれ変わります」「細胞が活性化します」
- 「必ず改善します」「絶対に変わります」
- 「これはアトピーですね」(疾患名を出す)
使える言い方
- 「気にされていたこの部分、画面でもこう出ています」(事実の共有)
- 「クレンジングは今どうされていますか」(生活習慣を聞く)
- 「乾燥しやすい季節なので、条件を合わせて来月もう一度見てみましょう」(比較の提案)
- 「肌に気になる症状があるようでしたら、皮膚科をご案内しています」(医療へつなぐ)
最後の項目は重要です。疾患を疑わせる状態を見つけたときに、自分で判断しないこと。医療機関の受診をすすめるのが、いちばん安全で、結果的に信頼にもつながります。
化粧品・施術を提案するときの注意
肌分析機そのものより、実際に指摘を受けやすいのは提案する商品や施術の説明です。
化粧品の場合
化粧品には、表示できる効能効果の範囲が定められています。範囲を超えた説明はできません。メーカーが用意した説明の範囲で話すのが基本です。「この化粧品でこう変わります」と自店で独自に踏み込むと、範囲を超えやすくなります。
施術の場合
エステティックの施術は、医業にあたる行為はできません。施術内容の説明でも、治療や医療行為を思わせる表現は避けてください。
分析結果と商品を結びつけるとき
「この数値だからこの商品」という結びつけ方は、その商品に数値を変える効果があると読めるため、表現に注意が必要です。
安全なのは、状態と商品の特徴を並べて伝える形です。「乾燥しやすい傾向が出ているので、保湿を重視した設計のこちらをお使いの方が多いです」といった言い方であれば、効果の断定を避けられます。
ビフォーアフター写真と体験談の扱い
肌分析機を使うと、比較の画像が自然に手元に残ります。これを販促に使いたくなりますが、扱いには注意が必要です。
掲載するなら
- 本人の同意を得る/顔写真は個人情報です。何にどう使うか、いつまで使うかを明示して同意を取ってください
- 撮影条件をそろえる/照明や角度が違う写真を並べると、実際以上に差があるように見え、景表法上の問題になり得ます
- 個人の感想であることを明示する/体験談を載せる場合は、効果を保証するものではない旨を添えてください
- 効果を断定しない/「こうなります」ではなく「このような例があります」
避けたいこと
- 加工した画像を並べる
- 条件の違う写真を「同じ条件」として見せる
- 謝礼を渡して書いてもらった体験談を、そう明示せずに掲載する
- 「効果には個人差があります」とだけ書いて、断定的な訴求を正当化する
最後の点はよくある誤解です。注記を添えれば断定表現が許されるわけではありません。本文そのものを、断定しない書き方にする必要があります。
イベント・SNSでの告知
店頭イベントの告知や、SNSでの発信も同じ基準が適用されます。とくに次は避けてください。
- 「無料肌診断会」(診断にあたる表現)→「無料肌測定会」「肌チェック体験会」
- 「肌トラブルの原因がわかります」→「肌の状態を7項目で確認できます」
- 「地域No.1の分析精度」(根拠のない優良誤認)
- 「今だけ」(実際には常時実施している場合、有利誤認になり得る)
イベントの運営については店頭イベント・催事での運用もあわせてご覧ください。
店舗として決めておくとよいこと
- 使わない言葉のリストを作る/「診断」「治る」「消える」「必ず」など。スタッフ全員に配る
- 言い換えのリストを作る/使えない言葉の代わりに何と言うかまで決める
- 疾患が疑われるときの対応を決める/誰が判断し、どう医療機関を案内するか
- 写真の同意書と保管ルールを決める/用途、期間、削除の方法
- POP・SNSの文面を確認する担当を決める/公開前に1人が目を通す
1番目と2番目はセットで作ってください。「言ってはいけない」だけだと、現場は何と言えばよいか分からず、結局グレーな言い方に戻ります。
よくある質問
Q1. 肌分析機は医療機器ですか?
A. いいえ。肌分析機(肌診断機)は医療機器ではありません。疾患の診断・治療・予防を目的とした機器ではなく、分析結果は医学的な診断ではありません。
Q2. 「肌診断」という言葉は使えないのですか?
A. 「肌診断機」は機器のカテゴリ名として一般に流通しているため、カテゴリ名としての使用と、接客で「診断します」と説明することは分けて考えてください。後者は医療機器ではない機器の説明として不適切です。「肌の状態を測定します」といった言い方に置き換えてください。
Q3. 分析結果から商品を提案するときの注意点は何ですか?
A. 「この数値だからこの商品」という結びつけ方は、その商品に数値を変える効果があると読めるため注意が必要です。状態と商品の特徴を並べて伝える形にして、効果の断定を避けてください。化粧品の説明は、メーカーが用意した効能効果の範囲内で行います。
Q4. ビフォーアフター写真を販促に使えますか?
A. 本人の同意を得たうえで、撮影条件をそろえ、効果を断定しない書き方にする必要があります。照明や角度の違う写真を並べると実際以上に差があるように見え、景品表示法上の問題になり得ます。
Q5. 「効果には個人差があります」と書けば断定的な表現も使えますか?
A. いいえ。注記を添えれば断定表現が許されるわけではありません。本文そのものを、断定しない書き方にする必要があります。
Q6. 疾患が疑われる状態を見つけたらどうすればよいですか?
A. 自分で判断せず、皮膚科など医療機関の受診をすすめてください。疾患名を出したり、原因を断定したりすることは避けます。誰が判断し、どう案内するかを、店舗として事前に決めておくことをおすすめします。